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小学校3年生の哲平の通知表に書かれた担任の言葉。
『いつも元気です』
『コミュニケーション能力が高いです』
『落ち着きがありません』
『なにかあると、丸め込もうとする傾向があります』
『反省することに抵抗があるようです』
「あんた、学校で何やってるの!」
「勉強だよ、母ちゃん。学校ですることってそれしかないよ」
「嘘をおつき! ひたすら勉強をする子に先生がこんなことを書くもんかい!」
「先生は『傾向』『あるようです』って書いてるだけだよ。言い切ってないよ、確信持てないってことだよ」
「哲平。そういうのを『丸め込もうとする』って言うんだよ」
残念なことに、姉二人はよく出来た双子で、さらに残念なことに妹莉々と茉莉もよく出来た妹だった。
常に4人と比較される哲平。けれどそれでめげる子どもじゃなかった。いや、彼の中に『めげる』『落ち込む』という言葉が存在しなかった。
「姉ちゃんを見てみな! いつも家のことを手伝うし勉強も頑張ってるよ」
「姉ちゃんはそういうことが出来るんだよなぁ。とても見倣えないよ」
「莉々も茉莉もテストはいつも100点だよっ」
「俺さ、『たいきばんせい』とか言うもんじゃないかって父ちゃんに言われたよ」
そして彦助は集中砲火を浴びる。
「あの子の口が達者なのは誰に似たんだろうね!」
「すまん(お前だろう)」
哲平は天才的に状況を読むのが上手かった。
「母ちゃん、父ちゃんに母ちゃんの誕生日に何プレゼントしようかって聞かれたんだけど、俺分かんないよ。何がいいの?」
「ま! ほんと? ごめんね、酷いこと言っちゃって。今夜はマッサージしてあげる!」
勝子は自分に真っ直ぐ正直だった。
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