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  (さて!)  帰った早々、哲平は腹を括った。三途川家で過ごした二日間が哲平の心を変えた。 (きちんと生きる。あそこはみんなそうしてた。俺も、『まんま』で正直に生きよう!) 「父ちゃん、母ちゃん、話がある」  二人が顔を見合わせた。いつもの通り、二人が正面に座りその前に正座で座る。哲平は二人の目をちゃんと見ながら口を開いた。 「俺、ゴールデンウィークに引っ越す。ここから独立することに決めたんだ。報告が遅くなってごめん!」  しっかりと頭を下げて、頭を上げた。父と母はキョトンとした顔。 「あの、分かった? 俺、出てくのショック?」  父ちゃんは不思議なものを見るような顔をしているし、母ちゃんは吹き出すのを堪えている。 「哲平。あんた、行動丸見えなのにショックも何も…… 先週の燃えないゴミの日に要らないものどんどん出してたじゃないか。取っ手の壊れてた洋服ダンスは粗大ごみで出してたろ? おまけに冷蔵庫の配送票テーブルに置きっ放しで、もう新しい住所も知ってるよ。みんなで引っ越し祝い、何かやろうかって話してたんだよ、夕べ」  今度は哲平がキョトンとする番だ。 「じゃ、知ってたの?」 「知ってるって、知らなかったのか」  彦助の呆れたような声。 「だって……だって、何も言わなかったじゃんか!」 「何言ってんだか。男は社会人になったら自立すべし! やっとその気になったかって父ちゃんと言ってたんだよ。手伝ってくれって言わないってことは、手が足りてるからなんだろうって心配する必要だって無さそうだったし」   
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