16

1/7
291人が本棚に入れています
本棚に追加
/252ページ

16

   こんな思いは初めてだった。人から受ける全否定。全拒絶。  ジェローム・シェパードという新入社員の前評判は凄かった。どこからともなく流れてきた噂。 『TR校トップクラスだって!』 『ハーフらしいよ』 『すごくピシッとしててまるでどこかのご令息って感じ!』  こんな話の出どころはたいがい人事の女の子たちだ。よくありがちな個人情報という意識も無い、単なるお喋り。それが経由して流れてくる。  その新人がR&Dに配属と聞いた時、哲平は好奇心いっぱいだった。 (花みたいに面白いヤツかもしんない!) 相変わらず花の受け答えは辛辣だが、それはスパイスみたいなものだ。いい刺激をくれる。  3月下旬に課長に挨拶に来た彼にはぎこちなさを感じていた。 (いかにも社会人一年生って感じだな) ならきっと楽しくなる。  課長が新人を紹介した。 「今日から池沢のチームに入るジェローム・シェパードだ。ジェローム、自己紹介だ」 「ジェローム・シェパードです」 (ん? 終わりか?)  当然のようにつく『これからよろしくお願いします』も『お世話になります』も無い。あの時のぎこちなさももう消えていた。まるで仮面のような表情に違和感を覚えた。   
/252ページ

最初のコメントを投稿しよう!