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こんな思いは初めてだった。人から受ける全否定。全拒絶。
ジェローム・シェパードという新入社員の前評判は凄かった。どこからともなく流れてきた噂。
『TR校トップクラスだって!』
『ハーフらしいよ』
『すごくピシッとしててまるでどこかのご令息って感じ!』
こんな話の出どころはたいがい人事の女の子たちだ。よくありがちな個人情報という意識も無い、単なるお喋り。それが経由して流れてくる。
その新人がR&Dに配属と聞いた時、哲平は好奇心いっぱいだった。
(花みたいに面白いヤツかもしんない!)
相変わらず花の受け答えは辛辣だが、それはスパイスみたいなものだ。いい刺激をくれる。
3月下旬に課長に挨拶に来た彼にはぎこちなさを感じていた。
(いかにも社会人一年生って感じだな)
ならきっと楽しくなる。
課長が新人を紹介した。
「今日から池沢のチームに入るジェローム・シェパードだ。ジェローム、自己紹介だ」
「ジェローム・シェパードです」
(ん? 終わりか?)
当然のようにつく『これからよろしくお願いします』も『お世話になります』も無い。あの時のぎこちなさももう消えていた。まるで仮面のような表情に違和感を覚えた。
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