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研修の中身はどんどんハードになっていくからなかなか厳しいものがあるが、哲平は常に先へ先へと進んでいた。研修内容のスケジュール表はもらっている。だから翌週の分を予習しておくのだ。お蔭でいつも一週間分の余力がある。
ある日、千枝から留守電が入っていた。
『手が空いたらすぐに電話をお願い』
こんなことは初めてだ。研修中の哲平の忙しさを知っている千枝はいつも無理を言わない。その後の休憩時間にすぐにかけた。
「千枝? 何があった?」
そうでなければかけてこないだろう。
『ジェロームが大変なことになっていて』
「大変って、な、もしかして千枝にみんなが言わなかったこと?」
『うん……私に言うと哲平さんに筒抜けになるだろうから黙っておこうって思ったらしいの』
「チーフと花だな?」
あの二人なら考えそうなことだ。
『……途中から私も教えてもらってたの』
ん? と引っかかる。
「隠し事無しっての、俺たちのルールだろ!」
『ごめんなさい! 絶対に言うなって言われて……私もこんなこと言えなかった。でもそれどころじゃなくなって。相田っていう人のこと、覚えてる?』
「相田? ……え、辞めたってヤツだろ? なんで今頃」
『ずっとジェロームをつけ回していたんだって。辞めた原因も歓迎会の時ジェロームを……』
「言えよ、ジェロームになんかしたのか?」
『トイレに引きずり込んで……レイプしようとしてたって』
驚き過ぎてポカンとした。
「確かにジェロームはきれいだけど……男だって分かってなかったのか?」
『違うの! ジェロームが男だから襲ったの!』
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