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  「ジェロームが哲平に『引っ越したら遊びに来てください』って」 「そうか、明日だっけ?」 「いん。嬉しそうだった! 三途さんに聞いたの。暗くて寂しい部屋だったって。こんなところに何年も一人で住んでたのかと思うとやるせなかったって」 「今度は寂しくないんだよな? 課長のそばに引っ越すんだって聞いたけど」 「もう安心だってみんなとも話してたの。私は明日手伝いに行ってくる。もしかしたら夜来れないかもしれない」 「いいよ。今日来てくれたし。その代わり……」 「なに?」 「次に来る土曜、美味しい物作ってくれないかな?」 「わ! 何が食べたい?」 「千枝の自慢料理! それが食べたい!」 「こってりしたのとさっぱりしたの、どっちがいいの?」 「若いからこってり! 夜頑張れるし」 「……ばか……」 (早いな、もう木曜か)  今日提出分のレポートを書きながら慌ただしかった今週を思い浮かべる。ジェロ―ムの助っ人に行ったし、昨日は千枝が来て嬉しいのもあってつい勉強をサボってしまった。しかも日曜は花の結婚式だ。 (今日、明日で頑張っとかないと。いざって時に困る)  講義終了の10分前にはレポートを提出した。 「相変わらず早いね。以前の人はたいがい持ち帰ってたよ」 「ちゃっちゃかやらないと俺も忙しいもんですから」 「その割には順調に進んでいるよ」  少し安心した。この調子で行けば遅れた時間はすぐに取り戻すだろう。遅れていると言っても、哲平のスケジュールではということだから。 『お願い、時間が空いたら電話して』  千枝からのメール。昨日来たばかりなのにそのメールからは切迫感を感じた。着信は4時20分。講義中なのは知っているはずだ。格子に断って廊下に出て、すぐに電話した。   
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