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   何度も何度も同じことを聞かれ、いい加減うんざりしていた。 『どうしてあの場所を知ったのか』 『横浜支店に勤務しているが容疑者と関りがあったのか』 『なぜ逆上したのか』 『殺意があったのか』  最後の点には怒るより可笑しくなってしまった。 「あんなヤツのために殺人? ばっかばかしい!」  もう面倒くさくなって、哲平は幼少からのことを一から話し始めた。 「事件に関係無い話はいい!」  途中で怒鳴り声が入った。 「だって、俺のことを知りたいんでしょ? 俺も自分のことを是非知ってもらいたいです! 変わりたくて寺に行って座禅組んで修行もしました。自分に正直であろう、その時に決意したのはそれでした。だから千枝とも付き合うことが出来て……あ、千枝って分かります? R&Dで同じチームなんですよ! 俺、彼女と結婚したくて。でもインドに2年間行くからその間に虫がつかないかと心配で。そうだ、刑事さん! 尾行とか張り込みとか得意なんですよね? 千枝に虫つかないように見張っててもらえませんか? ちゃんとバイト代、払います。出世払いですけど。あ、で、中学の時の話に戻るんですけど」  実はすでに哲平のことは調べがついていた。警察としては、まだ話していないことがあるか、事実確認をする必要があった。正当防衛か殺意を持っていたかを知るためだ。  正当防衛と認められるにはいくつかの条件がある。それをすべてクリアしないと認められない。哲平の行動がそれをクリアしているかどうか。  緊急性があったこと。相手が刃物を持っていたので被害者だけではなく自分の身にも危険を感じたこと。特に被害者は全身に出血をしていたので死亡の可能性もあったこと。  状況は哲平が思っているよりも悪くは無かった。      
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