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「哲平、ティッシュ取って!」
「はい! 二知花ねぇちゃん」」
「哲平、麦茶飲みたい!」
「氷入れてきたよ、一知花ねぇちゃん」
「兄ちゃん、野球ボールお庭に転がってっちゃったぁ!」
「莉々、2階でなにっやってんだよー」
「窓のとこで上に投げて遊んでたら掴みそこなっちゃったの」
「まったくもう。待ってろ、今取ってきてやる。茉莉、なんで泣いてんだ?」
「柱に足ぶつけた、痛い、兄ちゃん、痛い痛い痛い……」
「よし! 後で兄ちゃんが柱を叱っといてやる! だから公園でブランコでもして来い!」
「うん!」
「哲平! 宿題は!? どこ行くんだい!?」
「庭だよ、莉々がボール落としたんだ」
「男のくせに女にへこへこすんじゃないよ!」
「はい、母ちゃん!」
「そんなに哲平を怒るな。あいつはよくやってるよ」
「もう4年生になったってのに使われてばっかりで。まったく気が弱いんだから。あんなに大人しくちゃ学校で虐められるんじゃないかって心配なんだよ」
「いや、そりゃないと思うがな」
「あんたには分かんないんだよ! 一知花たちの服着せて育てたから女みたいになよなよする子になったのかねぇ」
(いや、そりゃないと思うがな。一知花たちになよなよしてほしかったよ)
2度も妻にピシャリと言われるのは堪らない。だから2度目はいつも心で呟く。
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