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「哲平、データは!?」
「チーフのメールの中っす!」
「おい、パワポ、出来たか?」
「池沢さんのメールの中っす!」
「哲平!」
「はい!」
「お前のその『っす!』って言い方、やめられないか?」
「善処します! でも課長、多分無理っす!」
課長はふんっという顔で横を向いた。
「あんた、課長に気に入られたわよ」
「なんでですか?」
「笑うこと、増えたもの」
「あれで?」
いつも苦虫潰したような顔の河野課長。とても笑っているようには見えない。『私用で哲平を使うな!』と、確かに課長はそう言ってくれた。しかし、課長の業務上の哲平の使い方は半端ない。お蔭で、座ったと思うと立つ毎日。
「笑ってるわよ、ほぼ毎日」
(チーフの言うことだから間違いないんだろうけど。あれのどこが笑ってるんだ?)
どうも分からない。
「チーフ、ずい分課長のこと分かるんですね」
「分かりやすいから、課長って。面白いし」
「チーフも変な人ですよね」
「変? 変わってるってんならいいけど、『変な人』っていうのはちょっとムカつくわね」
「いや! 怒ったら素敵な顔が台無しになるって」
「そんな心配、要らないから。怒っても私はきれいだもの」
哲平は思いっきり吹き出した。
「哲平。今夜つき合いなさい」
「えええ、チーフとデートは嫌っす!」
「池も来ない?」
「あ、勘弁してください。今日は父を…………」
「言い訳思いつかないなら来なさい!」
「……はい」
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