テルの物語(完)

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   鳴山が手を引いたことで東井と杉野はほとんど孤立することになる。 「大阪がどう動くか分からねぇぞ」  そう伝わった時に離れるものが次々と出たからだ。東井は鳴山に何度も連絡を取ったが、若頭が出るのみ。 『あんたたちを見てようと思いましてね。力のあるところを見せてください。そしたらあんたらにつきましょう。これはどの組織にも伝えてあります。後はあんたんとこが頑張ればいいだけの話。大阪は利で動く。そう思っといてください』  抗争が鎮火したのは1年後。親父っさんは一度撃たれたが大したことは無かった。洋一が突き飛ばしたからだ。洋一は重傷を負ったが、徐々に回復していく。何人か死人は出たが、それを背負ってテルは刑務所に入った。出所するのは10年後。模範囚として1年早く出る。  刑務所に入っている間に鳴山は改めて親父っさんの下に下った。それで全てが決まった。  出所の日。親父っさんは表でテルを待っていた。車は無し。護衛は遠く離れて。 「親父っさん! 護衛をそばに置いとかなきゃだめです!」 「お前を待つのに野暮なことはしたくねぇ。俺はお前と歩きたかったんだ。付き合え」 「出た早々我がままですか」 「お前は言っただろう、自分の前でだけ弱気になっていいと。お前がいない間俺ぁ踏ん張ったよ。褒めてくれ」 『おまえ、がんばってるな』  父の声が聞こえた。きっとこういう形は望んでいないだろう。ヤクザになるなど。 (でも俺は頑張ってるんだ、父さん。後悔はない。幸司さん。俺は戦って良かったよ)  ――「テルの物語」完 ――   
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