洋一の物語(完)

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  「おい、無茶するな! 火事なんか」 「発煙筒ですよ。これ」  作業服の中からびしょ濡れの発煙筒を2本取り出した。脇では春香と連れて行った若いのが咳き込んでいる。 「ちゃんとこうやって回収して来たし。白と黒を混ぜたから結構本物っぽかったでしょ」 「それから足がつくってことは無いんだろうな」 「ないですよ、バイトやってた時にくすねたヤツだから」 「どんなバイトだよ」 「撮影現場」  二人の話の間に春香は割って入った。 「なんなんですか! あなたたち、誰なんですか!?」 「あんた、気が強いね」  イチが笑う。 「大丈夫そうで良かった。洋一から頼まれたんだ、あんたを助けてくれって」 「洋一……あの子、無事なんですか!?」 「無事って言っていいかどうか…… ウチで預かってるよ。とにかく連れてくから。ただちょっと遠回りする。変なのを連れてくわけにはいかないからな」  イチはあちこちぐるぐる回って伴野たち2人を駅の近くで下ろした。金を2万渡す。 「なんか食って帰れ。途中で電車乗り換えろよ。伴野、良かったら俺の下に来ないか? 考えといてくれ」  イチはそのままある自動車工場に向かった。 「イチさんじゃないか」 「悪い、いつもの」 「ああ、用意してあるよ」  別の車に乗り換える。 「塗装代、組に請求しといてくれ」 「今回はサービスだ。親父っさんによろしく伝えてくんないか?」  イチはにやっと笑った。 「分かったよ、よく伝えておく。資金繰りで困ったら言ってくれ」 「恩に着るよ」  
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