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イチは春香に家にあるものでこれは手放せないというもののリストを作らせた。入っている場所も。
「服だの日用品だの。新しく買えばいい物は除外してくれ。本当に必要なもんだけだ。急いでくれ、手を打てなくなる」
何かをしていることも今の春香にとっては必要なことだ。日用品を除外することでリストが出来上がるのは早かった。
「どうした?」
「こうやって見ると……必要なものって少ないんだなと思って……」
「そういうもんだ。身一つになるって簡単なんだよ」
イチはざっとリストに目を通した。入っている場所もきっちりと書かれていることを確認する。
「これ以外のものは諦めてくれ。無かったものと割り切るんだな」
イチは電話をかけた。相手は伴野。
「メールでリストを送る。手早くやってくれ」
『分かりました。で、荷はどうします?』
「どこか遠方から宅配で送ってくれればいい。送る側の住所は適当に。ここに届きゃいい」
『持ってっちゃダメですか?』
「ここには来るな。相手はお前を張るかもしんねぇからな」
『届くのに日数はかかりますよ』
「構わねぇ。後は任せる」
優作のことではカジが動いている。
「あのバカ、携帯も置いて行っちまって」
「だが行動は単純だ。粘りはあるからアパートには行きつくだろう。柴山さんとこに連絡しとく。近辺に誰がいるか分かんねぇから四の五の説明なしで引き摺って来い。真っ直ぐ帰って来るなよ」
「分かってます」
(優作に付ける薬ってないもんかな)
本気でイチはそんなことを考えてしまう。
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