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駅に向かう。電車を何回か乗り換える。三途川の家からだいぶ離れたところで電話をかけた。
「終わったよ。現場の連中は撤収させてくれ」
それだけ言って電話を切った。ホームのベンチに座って何回か電車を見送った。
「お前のせいでみんながえらい目に遭ったんだ、覚悟しとけよ」
「俺は洋一に頼まれたことをやろうとしただけだ!」
「東井と柴山さんとこに迷惑かけたんだぞ。そんなこと通用しないって分かるよな?」
「でも探さねぇと! 桜華」
「その名前を出すな!」
「……そこの連中に連れてかれてたら救い出さなくちゃなんねぇだろ!」
カジのゲンコツが優作の頭に落ちる。
「いてぇよっ!!」
頭を抱える優作に、子どもに言うように言い聞かせる。
「もうこっちで保護した。お前は何も考えるな。みんなにどう謝るのかそれだけ考えとけ」
「俺は間違っちゃいねぇ!」
「つくづくバカだな、お前ってヤツは」
それきり二人とも口を利かずに、今度は三途川家に向かって電車に乗った。
やっと家に辿り着いた。イチはいない。あちこちに頭を下げに行っていると言われた。
「東井の事務所に借りを作っちまったって、イチさん参ったって顔してたよ。イチさんのお蔭で命拾いしたな」
待ち構えていたテルから説教される。
「相手が桜華組なんだ、いくら気をつけたって過ぎるってことは無いってことくらい分かってるだろ! 今桜華組と事を構えるわけには行かないんだよ。俺たちはヤクザじゃないんだ、組同士のごたごたに首を突っ込むな!」
「でも」
「『でも』は無しだ。……お前の気持ちが分かんないんじゃないんだよ。ただな、突っ走るな。行く前に俺になんで何も言わなかった? そういうんだけでも変わるだろ? お前の頭はな、『浅はか』って言葉で溢れてるんだ。もうちっと自分ってものを理解しろよ。とにかく親父っさんとイチさんにはひたすら謝れよ」
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