洋一の物語(完)

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   春香の書いたリストの物は伴野の働きで回収できた。たいした量じゃなかったから騒ぎのあった夜に忍び込んで持ち出したのだ。今頃桜華組じゃ消えた姉弟の行方を必死に探しているだろう。けれどそこに三途川組が絡んでいることを示すものは何も無い。  住民票は他県の三途川組の息のかかった家に移した。正確に言えば空き家だ。郵便物は全て私設私書箱に届く。念のため柴山の知っている行政書士を動かして住民票保護の支援措置も取らせた。これで洋一に繋がるものは全て絶ったことになる。  春香は東北の旅館で働くことになった。洋一は三途川一家に役に立ちたいと言うのをイチが一喝して姉と一緒に東北に行かせた。  半年我慢して、洋一は何度もイチに連絡を取った。どうしても組の役に立ちたい。 「それってヤクザになるってことか?」 『はい。どこの事務所でも構わない、俺を使ってください』 「面倒なんだよ、お前を使うの。死体を一つ用意しなきゃなんねぇ」 『死体?』 「お前を法的にも死んだことにしなくちゃなんねぇだろ?」 『出来るんですか!?』 「そこまでお前に手間暇かけたくねぇんだけどな。やれることは充分やってやったはずだ」 『分かってます。だからこそ役に立ちたいです! どうかとりなしてもらえませんか?』 「親父っさん、洋一がうるさくて敵わないんですけどね」  勝蔵は笑った。 「いいよ、ここに来させろ」 「でも桜華組が」 「あそこは今内輪もめで忙しい。お前も知ってるだろ?」 「確かにあそこは縄張りのことでがたついてますが」 「洋一は連中に取っちゃ雑魚だ。もう追っかけてもいねぇだろう。ただし、盃は無しだ。まだ若いからな」 「親父っさん、甘すぎますよ」   
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