優作の物語(完)

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   そしてとうとう対立が表面化した。桜華組が後ろ盾として東井たちの動きを押したのだ。    その日は運悪く、ありさ一家が三途川家にいた。ありさの夫池沢隆生の父の七回忌で是非に、と来たのだ。その情報が杉野に流れた。三途川の一家は突然の門を叩き破る音に立ち上がった。急襲だ。 「隆生さん! お嬢たちを連れて2階へ!」  イチの叫びでありさは娘の双葉を抱え上げ、池沢は息子の穂高を連れに走った。風呂に入っていたはずの穂高の姿が見えない…… 「親父っさん! 穂高がいない!」  その池沢の叫びでありさが駆け下りようとする階段をテルが塞いだ。 「お嬢! 来るんじゃねぇっ!」 「穂高が、隆生ちゃんがっ」 「任せろっ、俺が行くっ!」  優作が叫ぶ。  すでに庭には6人ほどの人数が見えた。さらに増えてくるだろう。玄関にカジが立ちはだかる。正面から来た板倉と睨み合う。  池沢は狂ったように穂高の姿を探した。途中で飛びかかられもしたが息子を追う父は傷を負っても立ち止まらない。 「隆生さんっ! あんたはお嬢と双葉ちゃんを守ってくれっ、若は俺が探す!」  普段甘いマスクの優作の目が据わっている。 「優作さん……」 「素人が出るんじゃねぇ! 2階にすっこんでろ!」  池沢は優作に頷くと、人を弾き飛ばしながらテルの守る階段へと向かった。洋一が階段に近づく連中を僅かに押し返した隙を縫ってその後ろに回ると、テルの後ろに控えていた女将さんを無理矢理2階に追いやった。 「ありさっ! 女将さんを頼む! ここはテルさんと俺が守る!」   
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