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チャイムが鳴って河野はすぐに玄関に出た。
「すみません、こんな時間に」
「いいんだ。穂高、疲れただろう? ジェイが一緒に寝るって張り切ってるぞ。行ってごらん」
こんな時のジェイは子どもたちにとっても癒しの存在だ。穂高は奥に走って行った。
「何があった?」
リビングのソファに落ち着いた花に冷たいお茶を出して河野が聞く。
「親父っさんのところ、襲われたらしいんだ。三途さんがよく言ってた『カチコミ』ってやつ」
「なんだって!? 池沢と三途は? 双葉はどうなってる?」
「分かんないんです、穂高は攫われたんだけど優作が助けてくれたんだって言ってました。俺のところに行けって言われて逃げてきたんです」
「それで?」
「様子は全く分かんないんですけど、池沢さんの方への連絡は哲平さんが任せろって」
「なら大丈夫だな」
「優作が…… どうなったのか分かんなくて。穂高を逃がすために追手を引きつけたって。数人の男が追って行ったらしいです」
「そうか……」
「花さん、いらっしゃい!」
「ジェイ! 今日大変なことがあって」
「みたいだね、穂高くんが少し話してくれたよ。だいじょぶだよ、みんな」
「……お前が言うと大丈夫なような気がしてくる」
「ホント? 大丈夫、大丈夫!」
「緊張感、無いなぁ」
「緊張感あっても無くても何も変わんないし」
河野が笑う。
「こいつ、緊張感ってのをどっかに捨てたらしいんだ。最近は緩みっ放しだよ」
「それだけ幸せってことでしょ?」
「うん! そうなんだ。穂高くんは俺がしっかり預かるから安心して。えっと、こっちからは連絡取らずに待ってればいい。だよね?」
「頼むな。河野さん、迷惑かけるけどお願いします! それから言いにくいんだけど」
「なんだ? 言えよ」
「場合によっちゃ大人数で転がり込むかも」
「分かった。連絡を待ってる」
「はい、よろしくです!」
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