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勝蔵は柴山、イチ、テル、洋一、他に数人を連れて東井の事務所に向かっていた。警察の相手は千津子と柴山のところの者たちが引き受けている。大掛かりな抗争となれば警察も黙ってはいない。千津子はのらりくらりと、血の気の多いもんが暴れこんできただけだと説明していることだろう。
傷の深い者は他の事務所に向かわせている。板倉たちや豊野も引き摺って行った。大したケガをしていない者だけが残っている。
豊野の話で穂高も優作も東井のところだと分かった。そこにカジから電話が入った。
『親父っさん、若は無事です!』
「本当か! 優作が助け出したんだな!?」
『そうなんですが。優作はどうやら若を逃がすために囮になったようです。海の方と言ってましたからあの近くの防波堤だと思います。俺もそっちに向かってます!』
「ありさたちは?」
『大丈夫です』
「そうか…… ありがとよ」
『優作が無事だといいんですが』
「穂高の命の恩人だ、何がなんでも助け出す!」
優作の体は、とぷりとぷりと波の間を漂っていた。明かりの下、夜釣りに来ていた年配の男たちがその姿を見つけた。
「おい、あれ」
「さっき銃の音がしたよな?」
「やっぱりあれ、銃声だったのか?」
「警察に連絡するか?」
「まず引き上げて見よう、生きてるかもしれない」
男たちは近くまで下りて行った。波の吹き溜まり。それが幸いした。
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