優作の物語(完)

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   柴山たちは勝蔵たちと途中で別れた。東井の事務所に向かったのだ。今、叩き潰しておかなければこれから先厄介なことになる。東井組長、またはその父親を拉致するつもりだ。  勝蔵たちは防波堤に向かった。その手前、ライトに赤い線がミミズのようにのたくっているのが浮かんだ。イチはすぐに車を止めた。 「血……」  洋一が蒼褪める。勝蔵とテルが優作の姿が無いかと必死に見回した。 「優作を探せっ!! 死なせるんじゃねぇっ!」 「はいっ!」  血の跡を辿ってイチもテルも洋一も走り出す。その血は防波堤の端で途切れた。 「優作ぅっ! 優作ぅっ!!」  みんなが叫ぶ、だが応えは無い。勝蔵はその場所にしゃがみ込んだ。 「死なせやしねぇ…… 死なせるもんか! 洋一、下に降りて探せっ! イチっ、テルっ! お前たちはこの先に行くんだ、どこかに流れ着いてるかもしれねぇ!」  上がって来た洋一は首を横に振った。カジが着いた。絶望的な洋一の顔を見てギリっと歯ぎしりが出る。その時、遠くに救急車のサイレンが聞こえた。ハッとして勝蔵が顔を上げた。 「カジっ!」 「行きます! でも親父っさんは移動してください、サツが来ると思います。分かり次第連絡しますから。洋一、頼む!」 「おぅ!」  心残りを吹っ切って、勝蔵は車に乗った。それを見送って、カジはさっき聞こえたサイレンの方に車を走らせた。   
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