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優作が目が覚めたのは次の日の夕方だった。ぼーっと目を開けたり閉じたり。
「目が覚めましたか?」
看護師がそばに寄ってきた。脈を取られて「先生を呼んで来ますね」と言われた。耳に入る言葉が上滑りして、何を言われているのかよく分からない。
(先生、どこ? 夢だった?)
そんなことをぼんやり考えていた。
医者が来て、手術のこと、銃創のこと、落ち着けば警察から事情聴取があることなどを説明された。
「危ない所だったんですよ。脚は銃弾が貫通してたから良かったんですが、背中から撃たれたものは体内に留まってましたからね。動脈を傷つけてなくて良かった。それでも途中で2度蘇生させました。よく持ったものです」
事情聴取があっても名前も住所も言わない。優作は沈黙を保った。意識がはっきりすれば、優作には今の状況が分かる。下手のことを言うわけには行かない、そう思った。
(親父っさんたちの様子が分かんねぇ。若、無事ですか?)
思い出した。久保木と話した後出てきた小さな手。あれは……
(あれは若の手だった…… 若が行くなって……引っ張り出してくれたんだ)
ありさたちは二日アパートで世話になった。
「こういうことがあっても俺は普通に来週から仕事に行くんだよな……」
なんだか現実に思えない、この数日が。
「ごめんなさい、隆生ちゃん……こんな風に巻き込むつもりじゃなかった、子どもたちも」
「お前が悪いわけじゃないよ。親父っさんたちもな。しょうがないって思わせてくれ。俺はそう言う危険も込みでお前を愛したんだって、もう一度その覚悟がついたよ。穂高が無事なのは優作さんのお蔭だ。手術は無事に終わったんだよな」
「見舞いを考えてる?」
「もちろん! だがだめなんだろう?」
「ええ。警察が張ってるから。父さんがきっと誰かを潜り込ませるわ。そしたら様子が分かるから」
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