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伴野は優作の目が覚めてから二日目の昼に病室に入って来た、白衣姿で。ケガをし、杖をついている。
「よっ!」
「伴野!」
「しっ、表にはサツがいるんだ、長居は出来ない」
優作は黙って頷いた。
「先に伝えなきゃいけないことを言う。黙って聞いてくれ。若は無事だ。あんたが望んだとおりに事は運んだ。親父っさんからだ、『今回のこと、頭を下げて礼を言う。元気になって帰って来い』」
優作の目にじわっと涙が浮かび、手の甲で慌ててぬぐった。
(若、親父っさん…… 良かった、俺、役目果たしたんだな)
「イチさんとカジさんからは『バカヤロー』」
優作は笑った。愛情のこもった『バカヤロー』だ。
「東井のところは終わった。柴山さんたちがあの日の内に片付けた。これでしばらく桜華組も手を出せないはずだ。他の連中も大人しくなった。親父っさんに逆らったらあんなデカいとこでも潰されるってことが身に沁みたらしい」
優作は目を閉じた。大きな荷が肩から下りたような気がする。ほぉっとため息が漏れた。
「傷に響くからな、これで行くよ。みんな見舞いに来たがってる。それまで待っててくれって話だ。大人しく養生してくれ。じゃな」
これでゆっくり眠れる。
(先生、ごめんな。一緒に暮らすのはまだまだ無理みたいだ)
『いいんだ、それで』
塞いだ目を開けた。そんな声が部屋に響いたような気がした。
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