優作の物語(完)

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   全治2ヶ月。そう言われた。背中の銃創が悪さをしている。それが治まれば歩くためのリハビリが始まる。  親父っさんの息のかかった弁護士が動いている。優作は単なるとばっちりで撃たれたという方に傾きつつあった。誰かに間違えられたのだと。すぐそばに東井の事務所があった。それがあの日、慌ただしい動きを見せていた。殺気立っていたという証言も出た(作った)。  優作が何も刑事に言わなかったのはそれによる報復が怖かったからだということになった。  そして、池沢家が見舞いに来た。 「優作……あんたには感謝しかない…… ありがとうございました!」 「お嬢……」 「優作さん、俺もこの通りだ。もっと早く来れなくて申し訳なかった」 「隆生さんまで……、やだなぁ、俺、照れるって!」  本当に真っ赤になってしまった。そしてその後ろから穂高が飛び出してきた。抱きついて、体を震わせて泣いている。一瞬、痛みに目を閉じたが、そのまま穂高の背中を撫でた。 「穂高! そんなに優作にしがみついちゃだめ!」  はっとした穂高がすぐに離れた。 「ごめん、優作…… 僕……あの時すごく怖かった。最初殺されるんじゃないかって、自分のことが心配で心配で…… でもその後、優作がどうなったかって思ったら…… ごめんね、僕、自分のことを先に心配しちゃって」 優作は優しい顔を穂高に向けた。自然にそんな顔になった。 「若。俺、若の顔見て、ほっとした。俺ね、死にかけました。もう死んじゃった人だけど大切な人がいるんです。学校の先生。俺に勉強ずっと教えてくれて、でも俺ってこんなバカで。誰だって俺のこと諦めるんだ。なのにその先生だけは算数や理科を一生懸命教えてくれた。その人が言ったんですよ、いいのか? って。俺について来るのか? って。俺さ、行きたかったんだ、その先生と一緒に。そのつもりだった。けど……小さな手が俺を離さなかった」  池沢とありさが顔を見合わせた。怖いのとは違う、ただぞわぞわとしてくる。 「若の手でした。若が俺を助けてくれたんです。ありがとうございます」 「僕、優作の役に立ったの?」  穂高が涙を零した。それを見て優作の頬が濡れていく。 「俺を救ってくれたのは若です。命をもらった。若のためならなんでもする、そう決めたんだ」  
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