のんのと源の物語(完)

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   板倉は親父っさんに逆らったらしい。3日間、便所以外は部屋から出るなと謹慎を喰らった。板倉はこすっからく金を稼いでる小僧が気に入らなかったのだ。  のんのは親父っさんに呼ばれた。 「俺はな、あいつが飛び込んできた時の目を見たんだ。ありゃ、ただの小遣い稼ぎじゃねぇよ。自分を捨ててやがった。だから連れて来た。何も言わないがまともに歩けるようになるまで頼む。もし帰らなくちゃならない家があるなら放っておいても帰ろうとするだろう」  その男は1階奥の、のんのの部屋に運ばれていた。のんのは結構広い部屋に寝ている。布団が敷かれ、そこに横になっている男のそばに座った。痛む足には氷の入った袋が乗せてある。 「痛むか?」 (返事無しか) 「お前、帰んなくちゃならないんなら俺が送ってくけど」  やはり答えない。男の頭を抱えて痛み止めの錠剤を口に突っ込んだ。それを吐き出して男が怒鳴った。 「なにすんだよっ!」 「なんだ、喋れるじゃないか。今のは痛み止めだよ。ちゃんと飲めよ」 「……要らねえ、放っといてくれ、帰る」  起き上がろうとするのを胸を押さえた。 「もうちょっと休め。まだ痛いんだろ? そうだ、腹減ってないか?」 「別に」  向こうを向くからのんのは「ちょっと待ってろ」と言って台所に行った。今朝の残りの味噌汁を温めてお握りをいくつか作る。冷蔵庫を覗いて卵と小さく切ったウィンナーに醤油を垂らして簡単に炒めた。 「ちょっと素っ気ないか?」  冷凍庫からほうれん草を出して流水で解凍してさっと茹で、薄めたうどんつゆをかけた。二人分の軽食を持って、部屋に戻る。   
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