のんのと源の物語(完)

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   笑った顔が可愛い。まだ学生なんじゃないかと思う。当たり屋をやるってことは金に困ってるってことだ。あれは危険な商売だ。相手の車のスピード、自分の飛び出すタイミング、角度、ドライバーの目の動き。一つでもミスると今回の源太のような目に遭う。 「お前、いくつだ?」 「18」  お新香をカリカリと噛み砕きながら言う。 「18? もっと年下かと思ってた」 「……ガキに見える?」 「まあな。18なら働くことだって出来るだろうに」 「なんだよ、説教かよ! そんなん聞く気ねぇからな!」 「バカヤローっ! 危ないって言ってんだ、その内命落とすぞ!」  さっきまでの穏やかな声が一変したから源太は息を呑んだ。 「今日はそんなもんで済んだが取り返しのつかないことになったらどうするんだ!」 「……あんた……本気で怒ってんの?」 「当たり前だ!」 「なんで?」  その質問でのんのの怒りが消えた。 「悪かった。俺の立ち入るところじゃなかったな」  そのまま言葉が立ち消えた。  源太が動かずにいるからのんのは食器をお盆に片付け始めた。ハッとした源太が慌てて正座になる。痛いのを忘れていたらしい、慌てて足を崩して頭を下げた。 「ご馳走さまでした! 美味かったです!」  上げた顔を見てのんのは苦笑した。 「おい。頬っぺたに飯がついてる」 「え?」 「ほら」  飯粒を取って自分の口に放り込んだ。呆気に取られて源太が目を見張る。 「あ、ごめん、つい」  のんのが立ち上がると源太も立った。少しよろめく。 「おい、まだ無理するな。それとも帰るのか?」 「あの、食器洗おうと思って」 「いいよ。そんなことするくらいなら休んでろ。そこの机の上に湿布があるだろ? 自分で取り替えられるよな?」  こっくりと頷くのがひどく子どもっぽく見えた。童顔だ。目は二重でぱっちりとして瞳がくりっとしている。 (こいつ、女の子みたいだ……) そう思って、バカなこと考えたと部屋から出た。   
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