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(ケガは足だけみたいだな)
そのことに安心しながら食器を洗い終えた。
「おい、あいつ、食ったのか?」
カジだ。それなりに心配だったのだろう、つっけんどんな言い方だが気にならなければ聞きはしない。
「ええ、一昨日からなにも食ってないって言ってましたよ。出したもの全部食べました」
「そうか……なんだか気になってな。捨て猫みたいな顔してた」
のんのは驚いた。普段そんなことをカジは言わない。
「帰るんなら声かけてくれ。歩けないだろうから」
そう言って奥に行った。
部屋に戻ると源太が苦労して包帯を巻いていた。
「なんだ、上手く巻けないのか?」
不器用なのだと思っていた。よく見ると手つきがおかしい。のんのは源太の左の手首を掴んだ。
「いてっ!」
「手もやってたのか? 言わなきゃ分からないだろう! 寄こせ」
皺になっている湿布を足にきちんと張り直して包帯を巻いてやる。次は手首。
「骨をどうかしたんじゃないんだな…… 捻ったのか」
こっちも湿布と包帯。
「……ありがとう」
「我慢はするな。治りが遅いと痛みがずっと残るんだぞ」
のんのに兄弟はいない。年下の扱いも上手いとは思っていないが、この家に来てから自分の中の何かがどんどん変わってきたような気がする。
「ここって……ヤクザ?」
「そうだよ」
「あんたも?」
「いや、本物のヤクザはお前を嫌ってた板倉さんとイチさんだけだ。他の連中は、そうだな、居候ってヤツだ」
「ヤクザの家に? 将来ヤクザになるってこと?」
「考えてないよ」
「でも、そのつもりなんだろ? あの組長。だから面倒見てるんだよな?」
「親父っさんなら何も言わないよ。ああしろこうしろっていうのも言わない。俺たち居候は自分で考えて動いてるんだ。掃除したり飯作ったり。合間に働いてるのもいるよ」
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