テルの物語(完)

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  「もう人を殺すことなど考えません」 そう答えて、少年院を出られることになった。  出てからはあっという間にことが進んだ。保護観察官と保護司との面談。まだ17歳後半。20(はたち)までは保護観察と言うことになる。その間に何か罪を犯せばすぐに少年院に逆戻り。元々の性格が真面目な順一に保護観察員も保護司も心配をしていなかった。好意的に見てくれる二人だった。  親元には帰りたくない、それだけは嫌だ。強固に言い張った順一は、住み込みで自動車修理工場で働けることになった。 『いずみ自動車整備』。 (なんかぱっとしないとこだな)  第一印象はそんな感じ。そこで保護司同伴でいろんな説明を受ける。この工場では何度かそういう未成年を引き受けているとのこと。アットホームで過ごしやすいこと。技術を身につけられること。  型通りの話が終わって保護司に「頑張れよ」と肩を叩かれて頭を下げた。振り返ると和泉社長がにこっと笑った。 「歓迎するよ。車に乗れ、行くところがある。あ、荷物、持ったままでいいから」  そこから30分ほど走った。着いた屋敷の駐車場に入る。 「ここ、なんですか?」  デカい家。屋敷だ、家じゃない。 「おいで」  言われてついて行った。 「和泉です!」  大きな声に「はい」と野太い声が応えて出てきた。ちょっと圧倒される。顔というより、『面構え』と言う方が合っている。迫力のある男だ。 「こいつがそうですか?」 「はい。親父っさんには」 「後は任せてください。後のことは和泉さんの方で?」 「大丈夫です、よろしくお願いします」  振り向いた和泉社長は笑顔だった。 「じゃな、頑張れよ。時々俺んとこに来ることになっている。サボらずに来るんだぞ」  そのまま帰っていく社長を呆然と見送った。  
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