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「……ヤクザ映画みたい」
「ばぁか、映画より面白ぇよ、現実ってのは。俺は親父っさんに気に入られるかと思ったんだがな、二度と顔見せんなって言われた」
「なんで! 助けたんじゃん!」
「自分のケンカだけじゃない、人のケンカにまで突っ込んでくるような危ないヤツは面倒見たくないって」
ヤクザなのに、『危ないヤツ』と言うのか?
「ヤクザなら掃いて捨てるほど見てきたし、いくらでも行き先があるだろう。好きなところに行けってな。だから親父っさんに頭下げた。面倒見てくれって。ヤクザになる気なんか毛頭ない、だから置いてくれ」
「それでいいって言われたの?」
「ああ。ヤクザもんになりたくないって言うんなら来いってさ」
しばらく無言が続いた。
「よく……分かんないよ、それ。親父っさんは何がしたいの?」
「さあな、ややこしいこと聞くのはイヤだから聞いてねぇよ。お前が聞いたら教えてくれ」
「大雑把だね! 優作さんは何考えて生活してんの!?」
「じゃ、お前は? なんかちゃんと考えてるか?」
「それは……」
「分かんないから不貞寝してるだけだろ? バイトしたきゃすればいいじゃねぇか。住所が必要ならのんのさんに聞いて住所どうしたらいいかって相談すりゃいい。電話もそうだ。後は……身元保証人か? イチさんに聞けば? そういうのってどうしたらいいかって。それっくらいのこともしてねぇんだろ? 連中の言ってんのはそういうことだ。どいつもこいつも回りっくどいからこうなる。本人が自分から分かった方がいいって言うが、俺はこだわんなくたっていいじゃねぇかって思ってる。お前に教えるのも教えねぇのもそれぞれの勝手だ。だから俺は教える。これで分かったか?」
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