反抗

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反抗

   さらに。祖父健一郎から蓮司は帝王学を学んだ。祖父の教えは蓮司に大きな影響を与えた。父と話すより祖父と過ごす方が好きだった。  帝王学というのは、リーダーシップの育成である。最終決断を下すに至る発想、勇気、責任という強い意識。常に権利と責任のバランスを持ち、多角的な視野を持つ。牽引力、統率力を備え、好む好まないによる選択を取らない。価値観や習慣やルール、常識に疑問を持つ。  そして、愛を忘れてはならない。夫婦は愛の基本。妻を変えようとするな。まず自分が変われ。妻は自分の鏡である。  父への反抗は凄まじかった。何もかも批判的になる。大学受験で激しい諍いをした。自立心を求める教育を与えながら、父は後継者としての姿を蓮司に求めた。父の在り方に矛盾を感じ、大学受験は我を通した。  経営学を学ばせたい父と、祖父から学んだ帝王学との間のギャップが大きい。父が自分に求めるのは、すでに敷かれたレールの上を走ること。 「父さん。俺は俺の世界を見たい。自分を試したい。出来上がったものの上に胡坐をかくのは好かない。大学の専攻は自分で決める。家に頼らずに人生を創っていきたい」  父は激昂した。 「恵まれた環境で育った者が外で生きていけると思っているのか! お前は甘い、一人でやって行けるなどと思うな!」  母を困らせたくは無かったが、蓮司は若い。自分の生き方を貫くことを選んだ。   
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