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10月
例のアド・オフィスへの納品はR&Dからのものに決まり、15日に納品した。開発は『新しくできる部署に花を持たせることにした』といい、その言葉に大滝が激怒した。
「仕事を何だと思っているんだ! 社内のどこかに花を持たせるために手抜きしたというのか!」
アド・オフィスとの繋がりはR&Dに太いパイプを作ってくれた。『サイバー・フィジカル・フュージョン』の別の下請け業者も紹介してくれたのだ。
「今日からこのR&Dが組織として立ち上がる」
10月1日。大滝部長の挨拶だ。R&Dの船出と共に、副部長から部長へと上がった。
「この部署を不動のものにするかどうかは君たちにかかっている。幸い9月中に早くも実績を上げ、追い風の中でのスタートとなった。これからも気を抜かず手を抜かず、頑張ってほしい。以上だ」
これでようやく本格始動だ。だが快く思わない人間が何人もいる。田中のようなプライドさえない連中。
塩崎という男が蓮司の前に立った。こいつは同期だが根性が悪い、実力も無い。それが後ろに松山、有田といった3年目を迎える社員と新人4人を従えている。
「河野課長。お忙しいところを申し訳ありませんがね、私たちの異動願い、受け取ってください。確か初めてここに集まった時『やる気のない者は出て行け』と仰いましたよね。この3ヶ月で分かったんですよ。あんたの下ではやる気が出ない。だから受理願います」
全員の前だ、周りがざわざわし始める。知らん顔して仕事をしているのは田中と野瀬くらいだ。
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