10月

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  「本気か?」 「こんな息の付けないような仕事の仕方をしていたらいつか体を壊す。パワハラと言ってもいい、あんたの態度は」  元々要らないと思っていた3人だ。 (こいつらがいると本当に『ゴミ部』になる) 日頃そう思っていた。まともに仕事をせず、すぐ手を抜き4階に息抜きにいく3人。その後ろに連なる新人にも腹が立った。 「手続き書類を渡す。それぞれ異動届に記入して明日提出。そのまま大滝部長に持って行く」  蓮司の即答に、前の3人の顔色が変わるのが分かった。  三途川がすぐに立った。 「課長! ご相談があります。ミーティングルームにいいでしょうか」 「分かった。塩崎、悪いな。俺は忙しいんだ」 (お前と違って) その言葉を飲み込む。突っ立っている7人をそのままに、三途とミーティングルームに入った。後ろから尾高も入ってきた。 「どうするんですか、説得もしないで!」  ドアが閉まったと同時に三途川が怒りをあらわにした。 「いたくないと言ってるんだ、出て行けばいい。やる気のない者は要らない、最初に俺が言ったことだ」 「もう始まってるんですよ、ここは。今潰すわけには行かないでしょう!」  三途川にもだいぶ『河野課長』が分かってきている。言い出したら聞かない、猪突猛進の猛禽類。だが今は説得の時だと思っている。 「そりゃ追い出すのは簡単ですが、そこは課長の腕なんじゃないですか? 部下の我がままをまともに相手するなんて大人のやることじゃないと思うけど」 「三途川さんの言う通りだと思いますよ。これを認めたら他の連中もいつ調子に乗るか分からない」 「あんなのを残しても効率が悪くなるだけだ」 「で、欠員補充で来るヤツにまた一から手をかけるんですか? それこそ非効率的でしょう。塩崎、松山、有田は確かに要らないけど若い子を放っておくのはどうかと思います」 (めんどくさい…… やっとここが始まったのに開発のクソみたいな連中に引っ掻き回されんのか?)  蓮司は今、アド・オフィスからの新しい打診にも応じようと残って仕事をしている。最初にドカンドカンと大きな仕事をこなしていけば簡単にここをつぶすことも出来ないはずだ。造反組に手を焼いている暇などない。  あまりものを言わない尾高が心配そうに自分を見ている。 「休んでないでしょう。休日も祝日も全部出勤している。早朝から来て一番最後まで残って。そうじゃなきゃこんなに順調に仕事が進むわけがない」  
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