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本当に見事な赤。腫れるんじゃないかと思ってしまう。
「後で冷やしに行ってくるよ。お前たちにもこの痛み、分けてやりたい」
自分たちも殴られるのかと慌てて手を振った。
「いやです」
「要らないです!」
「お前たちのせいだからな。俺がお前たちのフォローをしなかったって怒られたんだ。だからこれからフォローをする」
いつもと違う雰囲気に戸惑っている4人。
「水野、ここ、慣れるのにまだかかりそうか?」
「おれ、ですか?」
「お前は思った通り分析に優れてるな。意外と田中はお前を買っている。あいつも俺みたいにクセはあるが、仕事じゃ大事にすべき人間をしっかり育てるタイプだ。今離れるのは正直勿体ないぞ」
「田中チーフが俺を?」
「お前、真っ先に聞かれてるだろう、『分かるか?』って」
「……はい」
「気にかけてるからだ。はっきりした人だ、そうじゃなきゃ声などかけない」
「元井、お前は? そうだった、塩崎のチームだよな。あいつはよく飲みにつれてってくれるだろう。悪い奴じゃないんだろうが、ここ出てどうする気だ? まさか開発に行こうなんて話は出てないよな」
ズバリ言われた元井は、言葉を失った。
「いいんだよ、お前たちが仕事しやすいところでするのは構わないんだ。ただ開発に今行くのはどうかと思う。この前のアド・オフィスの仕事で開発は益々ここを目の敵にしている。そこから移って大事にしてもらえると思ってるか? 他の連中もそうだ、今は時期が悪い。そうかと言って開発の勉強をしてきたのに営業や総務に回されるのも嫌だろう?」
頷くしかない。大学もそのために頑張ってきたのだから。
「ここの先輩程度の言葉より上役たちの目を気にした方がいい。配置された部署から仕事がキツいからとさっさと逃げ出す社員にどれほどの評価をくれるか。始まって1ヶ月も経っていない、上はそう判断する」
「でもここまでの3ヶ月のこと、ちゃんと大滝部長も見てくれてるって」
「そう吹き込まれたのか」
蓮司は笑った。
「いいか、組織の再編成の正式な時期は10月なんだ。その前は単なる準備期間。つまりひと月も経たない内に逃げるとしか思われない。嫌な言い方だが、今後の評価には大きく影響する。俺が伝えたいのはその事実だけだ。最後に選択するのはお前たち自身。後は自分で考えてくれ。異動を望むなら4時までに書類提出。以上だ」
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