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テトリス道
結局ゲームは負けた。
「残念だねー」
「今日の先輩はイジワルですね!」
「ゲームでは遠慮しないんだ。また対戦してあげるよ」
「練習して来ます! エストニアに行くまでに何度か挑戦しますからね!」
「いいよ、胸貸してあげる」
帰りの車の中、途中までは悔しかった。だが、あのオムライスを思い出し少しずつ可笑しくなってきた。
(『おれの』って…… そういえば文字数少ない分、ケチャップの太さたっぷりあったな)
とうとう一人なのに笑い声をあげてしまった。
(俺、こんな正月初めてだ……)
誰かとゲームをする。一緒に食事を楽しむ。声を上げて下らないことで争う。
(先輩…… ありがとう!)
一つ違いだし、認めてもらえたらいつか友人としてそばにいたい。
気がついた。
(先輩の働き方って、テトリスなんだ!)
[仕事と仕事の間に空きが無い。終わるころには次のことを考えているんだ。どれをやっていてもペースが変わらない。そして手抜きが無くて正確だ]
正にテトリスをしている時のジェロームの姿だ。ゲーム中に言っていた。
『コツ? ……7つの種類しか落ちてこないし、次に落ちてくる形分かってるし。目の前のを落とす場所を決めたら次のを見ればいいだけでしょ? 仕事よりうんと楽だよ』
(エストニアでテトリス練習しよう!)
健のテトリスの道が始まる。
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