第04章 我想ウ、故ニ我在リ

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紙媒体の本を別とすれば、現在の本、つまりランキングに入る本はすべて管理局のAIが創作している。 小説も、ビジネス書も、タレント本も。 AIがビッグデータから、世間が求める本を執筆し、ヒットさせる。 AIがヒット作を映画の脚本として、アレンジを加える。 AIが映画の世界観を基に曲をつくり、アーティストを選定する。 AIがプロデュースした映画や楽曲から、新たなスターが誕生する。 その一連の娯楽を国民は、手を叩いて迎え入れる。 昔は『六法全書』なる膨大な量の紙を消費する法律書があったらしい。 実に非効率だし、地球環境にも優しくない。 今では、AIが善悪のガイドラインを示し、AIの指示で犯罪者を検挙する。 裁くのも、刑の執行も勿論AIだ。 三権分立は3体のマザーAIが担っているので、ある意味で健在だ。 かつて官僚が立案し、内閣が審議し、国会で可決された法律は施行まで無駄に時間を費やしていた。 元々は国連が提唱した十の脅威への対応策がベースだった、 『人類の安全保障に関する重大脅威対策特別措置法』――通称『AI特措法』――により、全ての法律はAIが立案から施行・改定をすることになり、現在ではAIが定めた法令は即日運用が可能となった。
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