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「はぁ、気が重い……」
俺は自宅のソファに腰を下ろした。
コンコン。
脳内をノックする音。
誰だろう、こんな時間に着信するとは珍しい。
目を瞑り、眼球でフリック・モーションをとる。
仙崎さんからの着信だと表示される。
「はい、雨堂です。どうしましたか?」
「蔵之介、頼みがあるんだけどさ」
「こんな時間にですか?」
「こんな時間だからさ。俺の服全部投げ捨てられたんだよね」
「はい、ミーティングで聞いてました」
「悪いけど、拾って届けてくれないか?」
「え?」
「俺、真っ裸だから拾いに行けないんだ。蔵之介ん家の向かいのホテルだ」
驚いて、カーテンと窓を開ける。
「右斜め上、55度」
仰角55度で、ホテルを見上げる。
ペンライトか何かで合図が送られてくる。
「先輩、ラブホにしてたら良かったですね。窓が開かないから」
「そうだな。でも、奇跡的に蔵之介ん家のバルコニーに落ちてんだよ」
故に、やはり、先崎先輩、持ってるな、と想った。
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