第05章 本ノ羅針盤

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「はぁ、気が重い……」 俺は自宅のソファに腰を下ろした。 コンコン。 脳内をノックする音。 誰だろう、こんな時間に着信するとは珍しい。 目を瞑り、眼球でフリック・モーションをとる。 仙崎さんからの着信だと表示される。 「はい、雨堂です。どうしましたか?」 「蔵之介、頼みがあるんだけどさ」 「こんな時間にですか?」 「こんな時間だからさ。俺の服全部投げ捨てられたんだよね」 「はい、ミーティングで聞いてました」 「悪いけど、拾って届けてくれないか?」 「え?」 「俺、真っ裸だから拾いに行けないんだ。蔵之介(おまえ)()の向かいのホテルだ」 驚いて、カーテンと窓を開ける。 「右斜め上、55度」 仰角55度で、ホテルを見上げる。 ペンライトか何かで合図が送られてくる。 「先輩、ラブホにしてたら良かったですね。窓が開かないから」 「そうだな。でも、奇跡的に蔵之介(おまえ)()のバルコニーに落ちてんだよ」 故に、やはり、先崎先輩(このひと)()ってるな、と想った。
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