85人が本棚に入れています
本棚に追加
第06章 乙女ノ祈リ
「皆、噂で聞いてるかも知れないが、今日からこのクラスに……」
「転校生ですよね!」
「松本~、最後まで言わせろよ。まぁ、良いや。入りなさい」
教室の引き戸がガララと鳴り、クラスメイト達は一斉に息を呑んだ。
昨日のうちに、転校生が来ることはグループチャットで知っていた。
そして、その容姿についても。
それでも、息を呑み、圧倒された。
美しい黒髪の少女が入口から担任教師の隣に移動するまで、クラスメイト達の頭の動きがシンクロする。
「高取ひかり、です。宜しくお願いいたします」
静まり返った教室で、軽くお辞儀をした処で、時間が動き出す。
とてもホームルームとは想えないテンションで歓迎の声が飛んだ。
お辞儀をしながら、はたと気づいた。
……危ないところでしたわ。
危うく、黒板に名前を書く処でした。
誰も、読むこともできないし、書くこともできない、日本語という『文字』を。
「お前ら、うるさい! うるさーーーい! 今、ホームルーム中だぞ。
他の先生に怒られるだろう! 高取の席は、ほら、あの空いてる席だ」
最初のコメントを投稿しよう!