第06章 乙女ノ祈リ

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第06章 乙女ノ祈リ

「皆、噂で聞いてるかも知れないが、今日からこのクラスに……」 「転校生ですよね!」 「松本~、最後まで言わせろよ。まぁ、良いや。入りなさい」 教室の引き戸がガララと鳴り、クラスメイト達は一斉に息を呑んだ。 昨日のうちに、転校生が来ることはグループチャットで知っていた。 そして、その容姿についても。 それでも、息を呑み、圧倒された。 美しい黒髪の少女が入口から担任教師の隣に移動するまで、クラスメイト達の頭の動きがシンクロする。 「高取(たかとり)ひかり、です。宜しくお願いいたします」 静まり返った教室で、軽くお辞儀をした処で、時間が動き出す。 とてもホームルームとは想えないテンションで歓迎の声が飛んだ。 お辞儀をしながら、はたと気づいた。 ……危ないところでしたわ。 危うく、黒板に処でした。 誰も、読むこともできないし、書くこともできない、日本語という『文字』を。 「お前ら、うるさい! うるさーーーい! 今、ホームルーム中だぞ。 他の先生に怒られるだろう! 高取の席は、ほら、あの空いてる席だ」
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