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1時限目の授業が始まるまで、質問と羨望の眼差しが彼女に注がれていた。
当然廊下には、他のクラスからも噂の転校生を一目見ようと、人だかりができていた。
幸い、授業内容は、彼女の記憶でまだ理解ができる範囲だった。
尤も、学習の遅れなど、クラウドベースに繋げば補完できる。
……良かったわ。
もし、困ったことが起きると、あの2人が起きてしまうのですから。
でも、私は認めたわけではありません。
未散と天羽のことを、認めてはいないのです。
だって、あの2人には、『高取』という苗字もなければ、お父様もお母様も居ないのですから。
どうせ、記憶障害になるのなら、あの2人の記憶が、存在が消えれば良いのに。
どうか、アカデミーでは現れませんように……。
私が無意識のうちに、祈りを捧げていると、周囲からは感嘆の溜息が起こったのでした。
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