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「っ……!?」
突然目を見開き、唯は箱を閉じ律に突き返す。
「えっ?」
「返す」
「えええっ!?」
「持って帰れ。そして燃やせ」
「いやどっちも無理ですよ!!てか燃やせって一体何入ってたんですか!?」
「見るな、知らなくて良い。とにかくこんなもんいらん」
「もうサイン貰ったから無理です!!てか送り主の住所でたらめだから返却出来ないし、尾上さんしっかり受け取ってくださいよ!!」
「だからいらねぇってんだろ!!」
喚きながら互いに押し付け合う姿は多くの人の注目の的になっていた。だがそれはどうでも良かった。ともかく律は仕事を完了したかったし、唯は是が非でもその荷物を受け取りたくなかった。
何より…
(この男とこれ以上関わりたくない!)
これが2人の本音だった。
ゴトッ!
押し付け合っていた段ボールが床に落ちた。
「あっ…!」
落ちた弾みで段ボールの中身も飛び出し、律は咄嗟に拾おうと屈む。
「………チャイナ服…?」
そう…鮮やかな刺繍が施された、丈の短い赤いチャイナ服。女性物としてはやや大きめだ。
事件の証拠品だろうかと一瞬考えたが、そんな重要な物を宅配便で送るはずがない。
「これ…」
律が拾おうとするよりも早く、唯が箱に入れ、近くのゴミ箱に箱ごと投げ捨てた。
「…あの…」
「聞くな」
「…知り合いさんって、変わった趣味なんですね……」
「……」
その無言はそうだと言っているようなものだと、この男は気付いているだろうか…律は少し心配になる。
「誰にも言うな」
般若顔が睨む。
「大丈夫ですよ。荷物の中身は個人情報だし、配達は喋りません」
いやいやいやいや…と首を振る律。
それを見た唯は眉間の皺を伸ばし、ゆっくり律に近寄り、その胸に長い指を沿わせる。
「尾上さん…?」
するり、と制服の襟元まで指が滑ると、ガッと胸ぐらを掴まれる。
「!?」
「もし他の第3者にバレたら、てめぇを留置所ぶち込む」
力任せではなく、静かに真顔で言い放つ。
「……ひゃい…」
言わないと言ったのに、静かに脅された。
(…この親父、絶対ヤクザだ…!)
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