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「…俺は悪くない」
「大丈夫?」
その夜、律は瑠花と居酒屋で飲んでいた。
「警視庁で何かあったの?」
「まぁ…この前気まずい出会い方をした刑事の荷物だったんだよね。
その刑事が俺の前で荷物を開けて見たから、俺も意図せず中身見て、誰にもバラすなって脅された」
「わぁ何かヤバ~い」
ビール片手に笑う瑠花。聞くだけなら笑えるが、律にとっては全く笑えない。
「あっ!美女刑事だったから緊張してやらかしちゃったとか?」
「いや、一回り上の親父。態度怖ぇし、元々綺麗系の顔だったんだろうけど普段眉間に皺寄せてまた怖い」
「あらぁ。てかイケおじ?
良いじゃん。刑事で顔も良し、ドラマかよ。八条君も顔は良いからさ、そのイケおじから格好良さを見習ったらモテるんじゃない?」
「見習うねぇ…どっちか言ったら見習ったら駄目な手本だろ。
警察内部で『狼』なんて渾名で呼ばれてるらしいし、面倒なのに関わって困るっーつの!」
やけくそにビールを流し込む。愚痴ってばかりいた為泡はとっくに消えていた。
「…てか八条君って、友達いるの?」
突然瑠花が問う。
「いるの?って…」
「あっ、私や仕事の人以外」
ギクリと固まる。えーと…と悩むがいつまでも口に出ない。
「やっぱり。
八条君って人付き合い悪くないのに、仕事関係以外の人の話したことないじゃん。だからって仕事の人とプライベート遊ぶなんてこともないし、なんか人との関わりを極力避けてる感じで心配だったんだよ?」
「そう…かな?俺は普通だったけど。俺勉強とか頭使うの苦手だからさ、配達先のクレーム対応とか余計疲れるから休みはずっと寝てるんだよ」
「ふーん…
まぁ、何かあったら私とか相談してよ。クレーム対応とか社長や皆で何とかするし」
「ああ、ありがとう…」
親指を立て笑う瑠花に、同じく笑うと最後のビールを飲み干す。
ビールの苦味と胸を締めるような痛みがした。
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