第三の遠吠え

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~~~ 「…俺は悪くない」 「大丈夫?」 その夜、律は瑠花と居酒屋で飲んでいた。 「警視庁で何かあったの?」 「まぁ…この前気まずい出会い方をした刑事の荷物だったんだよね。 その刑事が俺の前で荷物を開けて見たから、俺も意図せず中身見て、誰にもバラすなって脅された」 「わぁ何かヤバ~い」 ビール片手に笑う瑠花。聞くだけなら笑えるが、律にとっては全く笑えない。 「あっ!美女刑事だったから緊張してやらかしちゃったとか?」 「いや、一回り上の親父。態度怖ぇし、元々綺麗系の顔だったんだろうけど普段眉間に皺寄せてまた怖い」 「あらぁ。てかイケおじ? 良いじゃん。刑事で顔も良し、ドラマかよ。八条君も顔は良いからさ、そのイケおじから格好良さを見習ったらモテるんじゃない?」 「見習うねぇ…どっちか言ったら見習ったら駄目な手本だろ。 警察内部で『狼』なんて渾名で呼ばれてるらしいし、面倒なのに関わって困るっーつの!」 やけくそにビールを流し込む。愚痴ってばかりいた為泡はとっくに消えていた。 「…てか八条君って、友達いるの?」 突然瑠花が問う。 「いるの?って…」 「あっ、私や仕事の人以外」 ギクリと固まる。えーと…と悩むがいつまでも口に出ない。 「やっぱり。 八条君って人付き合い悪くないのに、仕事関係以外の人の話したことないじゃん。だからって仕事の人とプライベート遊ぶなんてこともないし、なんか人との関わりを極力避けてる感じで心配だったんだよ?」 「そう…かな?俺は普通だったけど。俺勉強とか頭使うの苦手だからさ、配達先のクレーム対応とか余計疲れるから休みはずっと寝てるんだよ」 「ふーん… まぁ、何かあったら私とか相談してよ。クレーム対応とか社長や皆で何とかするし」 「ああ、ありがとう…」 親指を立て笑う瑠花に、同じく笑うと最後のビールを飲み干す。 ビールの苦味と胸を締めるような痛みがした。
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