第一の遠吠え

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「エロ…」 思わず呟き、溝尾に蹴りが入る。 「ぐほっ!!」 「っ!」 鋭い睨みで顔を真っ赤にし、唯は素早く居間を飛び出す。 「恩を仇で…クソオヤジ…!!」 のたうち呻き玄関の方を睨む。 だが、恨みよりも、自分より一回り年上の男の無防備な姿がこびりつき離れなかった… 「……ヤバくね?」 ~~~ 「クソがクソがクソがクソがクソが……!!」 羞恥と油断した情けなさで頭を抱えながら、唯は乱暴に重く気持ち悪いスーツを着る。 濡れたなど関係ない、早くこのアパートを出たかった。 ふと、下駄箱の上にタオルが敷かれ持ち物が並んでいるのに気付く。律が並べたものだ。 唯は1つずつ確認しながらポケットにしまう。煙草(湿気た)、ライター、ベルト、手帳(端が濡れた)とボールペン、赤バッチ、警棒、手錠… 最後に黒い手帳を確認する。 『尾上 唯 巡査部長』 警察手帳を確認し、ポケットにしまう。 先程の動揺を捨て、鋭い目の獣は殴るようにドアを閉めた。
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