恋には必要ない

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恋には必要ない

恋人に別れを切り出された。 「もう無理よ…これ以上一緒にいても二人とも駄目になるわ」 駄目になる? 僕は君さえいれば何もいらないのに。 他のことは君に比べたら些細なことなのに。 どうしてそんなこと言うんだろう。 君の言う大事なことは僕より大きいっていうの? そんな疑問が頭を駆け巡った。 気がつけば僕は彼女に手を伸ばして・・・ 目が覚めると、そこは彼の部屋だった。 起き上がった時、何か足に違和感があった。 足を見ると、鎖でつながれていた。 「!」 「驚いた?」 顔を上げると、そこには彼が。 「何これ・・・あなたがやったの?」 「そうだよ」 彼はいつものように微笑んだ。 「何でこんなことするの?」 「君が別れようとか言うからだよ」 「それは、あなたのためだと思って」 彼は私に依存して他の事をおろそかにしていた。 友人や仕事にしても。 このままだと彼がダメになると思って別れを切り出したのだ。 私がそう言うと彼はむすっと怒った顔をした。 「僕のため?そんな風に感じているなら間違いだよ」 彼は言った。 「僕は君がすべてなんだ・・・君さえいればいい。 他のことはただのおまけにすぎないんだ」 「そんなの間違っている。恋愛っていうのは互いに高めあって成長できるものじゃないと・・・」 「は?間違っているって?君の方が間違っているよ?恋愛っていうのは 元をたどればただの生殖のための手段にすぎないんだ。」 彼はそういうと、部屋を出て言った。 私は足の鎖を外そうとするが、全く鎖は外れなかった。 そうしているうちに彼が戻ってきた。 彼の手にはナイフが握られている。 「!」 「君が僕のもとを離れるなんて絶対に許さない。そんなことするなら 君を殺して僕も死ぬ」 私は恐怖で震えた。 「・・・わっ、わかった・・・私はここにいるわ。 あなたから離れない。あなたの子を産む」 私が震えた声でそう言うと、彼はにっこり微笑んだ。 「ありがとう、僕の愛しい人」 それから1年たった。 私はこの家にずっといる。 彼の許可がないと外には出れない。 外に出るときは彼と常に一緒にいることが条件だ。 彼は仕事以外は常に私のそばにいる。 「いずれ仕事も在宅の仕事に変えたいな。そうすれば君を一人にしないですむだろう?」 最近彼は私にそう言っている。 私の世界には彼しかいない。 おそらく彼の世界にも私しかいない。 世間から見ればこれは異常だろうが、私達は幸せだ。 前の私が間違っていた。 恋愛に高めあうとか成長とかいうものは必要なかったのだ。 ただ互いに好きな気持ちさえあれば。 私のお腹には今、彼の子が宿っている。 彼に似て素敵な子に育ってくれるといい。 私はお腹を撫でた。
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