マラソン大会

1/1
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

マラソン大会

僕が小学生の頃の話。 僕の隣の席に、成績優秀だが、足の遅い女の子がいた。 彼女は近くに行われる「小学校町内マラソン会」を嫌がっていた。 毎年、町内の決められたルートを走るイベントで、自分は周りの人間より走る のが遅いからだった。 出たくないという彼女に、僕は言った。 「逃げるな、頑張ればいいことある」 彼女は最初は嫌そうな顔をしていたが、僕が何度か言い続けると頷いた。 マラソン大会当日、 彼女と僕は走り始めた。 足の速い僕は早く走り切ったが、彼女は戻ってこなかった。 夕方になっても、夜になっても戻ってこなかった。 翌朝、彼女は近くの公園のベンチで遺体となっているところを発見された。 1か月後、近所に住む男が逮捕された。 1人で走っている彼女をさらって殺したらしい。 翌年から「小学校町内マラソン会」はなくなった。 ・・・僕が「逃げるな」と言わなければこんなことにはならなかった。 だから、もう僕は「逃げるな」なんて人には言えないんだ。 「わかった。逃げます」 すっきりした顔で後輩は言った。 後輩は彼女を妊娠させて、中絶させるか、音信不通になるか、 それとも観念して結婚するか悩んでいた。 今、僕の話を聞いて、音信不通を選択したようだった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!