第01章 불금(プルグム) 金曜日の夜

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「なぁ、リョウ。大事な話があるんだ」 (かす)かに、父さんが話しかけてる気配があり、僕は、ボリュームを下げた。 「え? 何?」 「大事な話。お前に」 「何? 父さん」 「父さん、再婚するかも知れん」 「マジで? ってことは?」 「そうだ、お前に新しいお母さんができるかも知れん」 「……ふーん。そのこと母さんは?」 「話してない」 僕の両親は、3年前、つまり僕が小学校5年生の時に離婚した。 お互いの仕事が忙しすぎて、すれ違いの生活だった。 保育園時代から、母さんは『うちは母子家庭みたいなもんだから』ってよく言ってた。 でも僕が高校を卒業するまでは、お互いに成長を見届けようという話になったらしい。 実際、僕がその事実を知ったのは去年のことだった。 中学校進学を機に話してくれたんだ。 近所の人は、未だに知らない人が多いんじゃないだろうか? 父さんは、フリーランスのイベンターで、一度仕事が入ると2週間から1か月くらい居なくなる。 イベントの仕事以外は、自宅2階の書斎に居る。 波がある仕事で、暇な時は1か月くらい家に居る。 だから、半ば溜まり場と化している僕の家だが、父さんが居ることが多いんだ。
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