第01章 불금(プルグム) 金曜日の夜

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第01章 불금(プルグム) 金曜日の夜

金曜日の夜7時前。 僕は父さんが運転する車で、テニスの練習場へ向かっていた。 明日は2年生になって迎える初めての大事な大会。 僕が試合に出ることは知っているけど、上位を狙っていることは知らないと想う。 父さんは、仕事の都合でよく海外へ行く。 僕のデビュー戦は、奇跡的に日本に居たから応援に来てくれたけど、結果は惨敗。 その後の大会は(ことごと)く、出張中で、試合結果しか伝えていない。 今までの戦績。4戦全敗。 期待しろって方が無理な話だけど、実は今まで負けた相手は優勝チームばっかりなんだよね。 うちの地区は、シード制がないから、強豪校も1回戦から出てくるんだ。 で、その実力者達が引退して初の大会。 顧問もチームメイトも皆、僕に大きな期待を寄せている。 僕のプランはこうだった。 2daysトーナメントを全勝で飾り、初優勝。 迎えに来た父さんに、『僕、優勝したよ』と一言だけ告げる。 ご褒美にお寿司を食べて、欲しかったゲームソフトをねだる。 我ながら、完璧なプラン。 いつも通り、僕は後部座席で、スマホを(いじ)りながら、テンションを高める。 イヤホンからアガる曲を耳から脳へインストールする。 大丈夫、僕には女神(・・)がついている。 この曲を聴くと、負ける気がしない。 今日は練習だけど、手は抜かないよ。 練習で出来ないことが、本番で出来る訳がないからね!
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