はじまりは・・・

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はじまりは・・・

 この国では、神に背くとみな等しく吸血鬼になってしまう。  何がどうなれば吸血鬼になるのか。誰も知らなかった。単なる言い伝え、戒め程度の話だった。神に背くような行いは、日の光を浴びて生活することが出来なくなる。そういうことだろうと、誰もが解釈していた。  しかし、事実はそれ以上に残酷だった。吸血鬼は何らかの比喩ではなく、本当だったのだ。さらには、それは強力すぎる呪いでもあった。  それが起こったのは、今から三年前のこと。そう、つい最近、これは事実だと人々は知ったのだ。  一人の有能な神父であり魔導師であった人が神に背いた時、彼は言い伝えの通りに吸血鬼へと堕ちてしまったのだ。目撃した者も多数おり、それが言い伝えではなかったことを、多くの人は知ることになった。  堕ちた神父は目の前にいた少女に食らいつき、その血を啜った。その後はもう、恐怖とパニックだった。吸血鬼は、非常に凶暴な生き物だと、話の通じる相手ではないと、この時、初めて痛感させられた。彼らにとって、自分たちは単なる食料でしかない。その事実が、とても大きかった。  そして、三年。堕ちた神父、吸血鬼と成り果てた彼はある地域を支配し、実質国王のように振る舞っている。いや、他の地域に被害が出ぬよう、そうするしかなかったと言うべきか。本来の王国は、吸血鬼がこちらまで浸食して来ぬよう、定期的に食料となる奴隷まで献上しているほどだ。  闇の王を刺激しないのが一番。吸血鬼とはいえ、いずれ寿命が尽きるのを待つしかない。それが、国家の下した判断だったのだ。  でも、それでいいのだろうか。呪いを解く方法はないのだろうか。彼が背いたこととは何だったのか。結局、その点は解明されていない。では、何が吸血鬼になる条件なのか。 「俺が、解決してみせる」  魔導師としての資格を得たラグランスは、遠くに見える城をきっと睨み付けていた。
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