第1章 魔王のお膝元

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第1章 魔王のお膝元

 魔導師。この言葉の響きに憧れる人は多いだろう。胸を張って歩くラグランスもまた、この名称が持つ蠱惑的な響きに引き寄せられた一人だ。  しかし、この国では魔導師とは賢者でもある。つまり、魔導師を名乗るための試験は超難関なのだ。それをパスするのに、ラグランスは非常に長い歳月を費やす羽目になった。術法は完璧なのだが、一般教養が大変すぎた。どうしてこれほどの教科が必要なんだと、何度試験問題を呪ったことか。そもそも、神父の資格を持っていないと受けられない試験なのに、さらに難関試験を用意している意味が解らない。そう何度も何度も悔しい思いをしつつ、机に齧り付いた。 「あの男と同期だったなんて、誰も信じないほどにな」  試験に費やした時間の長さを思い出し、ラグランスはふと遠い目をしてしまう。それに、自分がなかなか試験に合格しないせいで、どれだけの人が、あの男の餌食となったのだろう。そう思うと、非常に胃のあたりがキリキリとしてくる。 「さて」  それはともかく、無事に魔導師となり、ラグランスはようやく使命を全うできるというわけだ。それはもちろん、堕ちた神父を助ける、もしくは討伐するというものだ。  ラグランスがそこまで堕ちた神父を思うのはもちろん、彼と友達であったからに他ならない。共に魔導師を目指し、向こうが先に魔導師になって悔しんだものだ。あいつは、ラグランスのことなど歯牙にもかけていなかったかもしれないが、ライバル意識を持つラグランスは、それはもう非常に歯痒かった。  それなのに、彼は堕ちてしまったのだ。今でも信じられないが、目の前で起こったことを否定することは出来ない。憧れ、勝手にライバル心を抱いていた友人は、吸血鬼に成り果ててしまった。
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