大切な日には真っ赤な愛を

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いつもの馬舎。 湿気を含み身体を怠くさせるムシムシと蒸せる暑さにほんのり冷たい風さんがそよそよ。 カエルゲコゲコ合唱すませ、お空に浮かんだちょっぴり欠けたまんまるお月様ですら寝静まる頃。 『サラ、……サラ、起きて。サラ!』 寝床の傍らにしゃがみこみ、艶やかなたてがみをあみあみして編み込みをしたり、無駄肉のないしなやかな括れを恨めしそうにつまみあげ右にぷにぷに、左にぐいぐい、弛ませてやろうかと目論みながら相棒の美馬・サラメンコをゆさゆさ起こしにかかるダルメシアン、じゃなかった。ただのものぐさパンダ。 「あちぃ~。……仕方ない、誰のにしようか?」 なかなか起きない相棒とうだる暑さへの苦し紛れにスマホを開きポチポチ。 サラの耳元に口を寄せ、静かにポツリポツリとランキング1位の短編ホラーを朗読。 徐々にうなされだした相棒に気付かず、本来の目的を忘れ作中にのめりこみ夢中で朗読するアホが一匹。 「ぅ、うぅ~ん。なんの嫌がらせじゃぁぁぉ!!っぎぃやぁぁ!?」 耳元で繰り広げられるホラーの朗読にうなされ目を覚まして飛び起きたサラメンコの眼前にはスマホのライトで青白く照らされたミズキンダのドアップ。 「サラ、うるさい」 起き抜けに腰を抜かしかけたサラに気遣うことなくキッパリすっぱり言い捨てる傍迷惑なパンダ。
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