私2

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私2

「もしもし…え…。はい、はい、わかりました」 母が倒れたらしい。 娘ならこういうとき取り乱すのが普通なのだろうか。でも、私は不思議と冷静だった。 私は自分の実家があまり好きではない。 父は昔ながらの亭主関白、弟は引きこもり。母は父に大人しく従いながら弟の面倒を見ていた。 自分に似ている母を、いつも私を怒る父を、出来損ないの弟を、私は嫌いだった。 しかし今回ばかりは実家に母の様子を見に行くことに決めた。 いくら嫌いな家族でも死に目に会わないのは娘としてどうかと思うし。死にそうかどうかもわからないのだが。 「母が倒れたので2、3日実家に戻りますね。ご飯は一応作り置きして冷蔵庫に入れてます」 「ああ、構わんが、大丈夫なのか?」 「…たぶん、大丈夫だと思います」 「わかった」 「いってきます」 少しばかりの荷物を持って私は家を出た。
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