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大学の近くの喫茶店に入った。
「新しい女の目星でもついたのか?」
こいつは俺に女を紹介し、付き合わせ、寝取る。高校時代から続いているし、なんならコイツとの出会いは俺の彼女寝取られたことから始まったし、今回もその件だろうと思っていた。
「あーまあ彼女っていうか…んー…」
「なんだよ、お前にしては歯切れ悪いな」
「…お前さぁ、結婚願望とかある?」
飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。
この自他共に認めるクズの口から結婚の話が出るとは思わなかったからだ。
「なんだお前、結婚するのか?」
「いいや、結婚するのはお前だ」
「あぁ?」
「お前と出会って7年か。お前とこんなに長く続くとは思ってなかったよ。正直、お前が会いに来た時彼女寝取ったから殴られる覚悟はしてたし」
「…なぁ、俺は今お前に口説かれてるわけではないんだよな?」
「違ぇよ」
心底嫌そうな顔をされた。
「じゃあ早く要件を言えよ」
「ある女と結婚して欲しい。俺のために」
「いつもの延長ってことか?相手は?」
「俺が愛している女」
俺はせき込んだ。コーヒーが変なところに入ったかもしれない。
「こいつな人を愛する感情とかあるんだ」
「おい、口に出てんぞ」
「百歩譲ってそういう感情があるとしよう。その女も人のものになって欲しいって思うんだな」
「ああ、むしろ俺をそういう性癖にした女だからな」
「興味出てきた。会ってみたいな」
「お前みたいな欲望に忠実男ならそういうと思ったぜ。明日暇?3人で飯食いに行こうぜ」
「いや、空いてるけど。その子が空いているとは限らないだろ」
「大丈夫、俺のこと大好きだから。絶対何が何でも空けるよ」
スマホを取り出しにやにやしながら電話をかけだした。
本当にこいつはその子のことを愛しているのかもしれないってちょっと思った。こいつのこんな緩みきった顔初めて見たし。
「もしもし、明日飯食いに行こうぜ。お前に紹介したいやついるんだ。ああ、じゃあ明日18時からな。場所は後で連絡するわ。…OKだ」
こいつはどや顔してきているが電話からは文句の声が聞こえていた。
「その子とどんな関係なんだ?」
「ん?俺の従妹。俺のこと大好きでさ。だから、お前は真面目タイプでいけよ。俺と正反対の性格の方があいつは落ちる」
「わかった。ドクズじゃなければいいんだな」
「おいっ!」
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