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六畳一間のおんぼろアパートに射し恵む清々しい朝日。
カーテンの隙間を縫うように、一条の光が部屋を分断している。
こたつの上の包みを照らした陽光は、そのまま突き当たりの壁に貼り付けられた沢山の写真へと伸びゆく。
飾られているのは、今にもそこから被写体の笑いさんざめく声が聞こえてきそうな、そんな写真ばかり。
驚いた事にそれらのどれにも幼児達にほぼ同化した雰囲気で短髪の男が一人。砂場遊びの場面にも、滑り台ではしゃぐ構図にも。時には幼子達同様泥まみれになっていたり、または画面のほんの隅っこの方で彼らを見守る、穏やかな笑みを湛えた保護者だったり。
「帝太郎、俺が茶碗洗ってる間にカーテン開けとけって言わなかったか?」
朝の光を目一杯室内に取り入れながら、長身の男が問いかける。
「……ごめん。忘れてた……」
彼には帝太郎から返ってくる言葉が予め分かっていたのか、それ以上は追及せず、代わりに小さく溜め息をひとつ。
それから窓を背に振り返ると、ふと目を細めてこたつの上を見遣る。
「……ところでお前、弁当忘れてねぇか?」
「あ」
丁度靴を履いたところで投げかけられた声に、いけない、いけないと繰り返しながら四つん這いで畳の上を移動する帝太郎。
スーツにネクタイというフォーマルスタイルなのに、スラックスの膝の部分が擦れて光ってしまうとか、そういう事には全く頓着しないタイプらしい。
玄関先には黒のロングコートが無造作に投げ出されていた。丈の長いそれを羽織る前だったのは幸いだったかも知れない。
どうやら壁の写真に写っている人物は帝太郎のようだ。
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