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飯盒炊爨(はんごうすいさん)
みんなでおしゃべりする時間はあっという間に過ぎて、16時の飯盒炊爨の時間になった。あちこちのバンガローから、同じジャージ姿のクラスメイトがぞろぞろ出てきて、挨拶をしあっている。
理花たちの班も細い山道を埋め尽くす青ジャージの列に加わり、下っていった。
川の橋を渡るときに、大智から言われたことを思い出して、先に飲み物と果物を引き上げようとして川の水に手をいれる。「冷たっ」思わず叫んでネットを離してしまいそうなほど、水温が下がっていた。
もし、食事ができてから引き揚げていたら、飲み物は冷えすぎてしまい、気温も下がる中で飲んだら震えあがっていたことだろう。教えてもらっておいて良かったと、理花は大智に感謝した。
割り当てられたブロックを組んだかまどへと行くと、男子たちが先に来ていて、楽しそうに追い駆けっこをしている。理花は大智との追いかけっこを重ねて、くすぐったい気持ちになった。
自然の中だと、開放的になって素直になれる。はしゃぎたい気持ちになるのは、男女も年齢も、頭の良し悪しも関係ないのだろうと、隣のBクラスの真人が司と追い駆けっこをしているのを見て、理花は思った。
文化祭に出す映画のカメラマンをやる新城真人は、落ち着きがあり理路整然と話すことからインテリのイメージが強い。その真人が声をあげながら追いかけっこをしている姿を見て、理花は何だか同級生の男の子たちが幼く思えて可笑しくなった。
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