プロローグ

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プロローグ

 ほんの小さなきっかけが自分の世界を変えることがある。 「先日、一年生全員に、オリエンテーションで行った陣地取り合戦の作文を書いてもらったが、このクラスの青木理花(ことは)さんの作品が選ばれて、学校文集に載ることになりました」  壇上で話す先生の言葉が終わると、まだ知り合って日の浅いクラスメイトたちが、誰だろうと教室中に視線を巡らせるが、当の本人は先生の言葉に全く気付かず俯いている。  小さなきっかけがもたらす変化と未来を、例え自分が望んでいないとしても、出会った仲間たちによって、思いもしない流れに乗せられることがある。 後日その真っ只中に巻き込まれることを、ホームルーム中に漫画の原案を練っている青木理花は知らなかった。   高校に入ってすぐにあるオリエンテーション合宿は、色々な地域からやってくる学生たちのために、常識や生活習慣の違いを統一して、高校生活をスムーズにおくらせるために行われる。規則だけでなく、同じクラスの仲間との交流を深めるため、ゲームをすることもあり、今回は知恵と行動力を試される陣地取り合戦が行われた。  「陣地取り合戦面白かったよな~」  生徒たちが顔を見合わせて囁き合うのを、担任が見回して満足そうに頷いている。クラスの盛り上げ役の進藤司が、あの時の失敗を語って、みんなを笑わせるのが耳に入り、斜め後ろに座っていた理花も笑顔を向けた。
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