二人だけのひと時

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 今のは気まずくならないように、わざとギャグしたよね?  大智に案外お茶目な面があるのを知って、理花は嬉しくなった。 「汝、右の頬を張られたら、左の頬も差し出せ。って言うじゃない?反対側の腕もやっちゃおっかな?」  大智の努力を無駄にしないように、10本の指を揉むように動かしながら襲い掛かるふりをすると、大智は「理花ちゃんはドSか?」と笑いながら、逃げて行く。  暫く追いかけっこを楽しんだ後、二人はバンガローに戻ることにした。  大きく手を振る大智に応え、理花も振り返しながら「またキャンプファイヤーの時にね」と叫ぶと、大智もオウ!と答えて、大きなスライドで橋を渡ってバンガローに続く山道へと消えていった。  じゃんけんに負けて班長になったけれど、大智と普通に話せたどころか、二人だけの楽しい時間を持てて、何だか得しちゃったかも……と自然と緩む口元を引き締めながら、理花は橋を渡っていく。急な山道も何のその。理花は幸せ気分に浸りながら、足取りも軽く、坂道を登り始めた。  
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